財産分与について

1 財産分与とは

財産分与とは離婚に際して、妻又は夫が相手方に対して財産の分与を請求出来るという権利です(民法768条1項・2項)。

一定の財産を有する夫婦の離婚の際には大きな争点となるものです。

 

2 財産分与の基本的考え

財産分与の基本的考えは、夫婦が財産を構築できたのは夫婦のお互いの協力があったからということであり(妻が専業主婦の場合でも)、分与の割合は基本的には1/2ずつとなります。

離婚前に別居期間が継続していることもありますが、夫婦のお互いの協力があったと言えるのは通常は同居中ですので、婚姻時から別居開始時までに増加した財産の1/2を分与することが基本となります。

 

3 財産分与を請求出来る期間

財産分与は必ずしも離婚時に決定する必要はなく、離婚後に請求することも可能です。

しかし、離婚時から2年を経過してしまうと請求出来なくなってしまうので(民法768条2項但書)、注意が必要です。

 

4 財産分与の対象となる財産

現金、預貯金、不動産、有価証券等の夫婦それぞぞれの名義の各財産が財産分与の対象となりますし、退職金も考慮されます。

但し、夫婦がそれぞれ婚姻前から有していた財産は特有財産といって財産分与の対象にはなりません。

 

5 財産分与の計算方法

財産分与の計算方法は、大まかに述べると、夫名義の財産額(債務が有る場合にはその金額を引きます)、妻名義の財産額(債務がある場合にはその金額を引きます)の合計額の1/2を分与するというものです。

例えば、夫名義の財産が2000万円、妻名義の財産が1000万円だったとします。

この場合、夫婦の財産額は合計3000万円で、その1/2は1500万円ですので、夫が妻に財産分与として500万円を分与することになります。

ただ、実際の財産分与の場面はこんなに単純とは限りませんので、詳細は個別に弁護士にご相談下さい。

なお、債務については、例えば個人的なギャンブルによる借金等、夫婦の共同生活と関係のない債務については考慮されません。

 

6 不動産について

(1)不動産は現金や預貯金のように単純に分割は出来ませんし、住宅ローンが残っている場合もありますので、財産分与の問題も複雑になることがあります。

不動産の場合には、その不動産を夫婦のどちらが取得したいのか、それとも処分をしてしまうのかという問題もあります。

 

(2)不動産の財産分与を適切に行うには、まずは、不動産の査定等により不動産の評価額を出すことです。
住宅ローンがある場合にはその評価額から別居開始時のローンの残高を引きます。

その結果、評価額よりも住宅ローンの残高の方が高い場合には財産分与の対象にはなりませんし、評価額の方が高い場合にはその高い分の基本的には1/2が財産分与の対象となります。

例えば、夫名義の不動産の評価額が2000万円で、夫名義住宅ローンの残高が3000万円の場合には不動産自体は財産分与の対象とはなりません

逆に、夫名義不動産の評価額が2000万円で、夫名義の住宅ローンの残高が1000万円である場合には1000万円のプラスになりますので、この1/2である500万円が夫、妻の各持分と言えます。

そのため、夫がそのまま不動産を維持する場合には妻に対して財産分与として500万円を支払うことになります。

逆に夫が同意すれば、妻が夫に対して500万円を支払って不動産を取得するということも考えられますが、この場合には残りの住宅ローンの支払や実際に妻に名義移転出来る時期等が問題になります。

 

(3)上には単純化したものを書きましたが、実際は複雑なことが多いですので、詳細は個別に弁護士にご相談下さい。

 

7 年金分割

(1)年金分割の対象となる年金

離婚に際して年金分割についても定めることが出来ますが、分割の対象は厚生年金(共済年金)であり、国民年金(基礎年金)は対象ではありません。

 

(2)年金分割手続の種類

①合意分割

離婚をする夫婦間で年金分割の按分割合を合意で取り決める手続です。

但し、按分割合は全くの自由ではなく、1/2が上限とされています。

合意分割では、婚姻期間中全ての期間の厚生年金が対象となります。

 

②3号分割

国民年金法の第3号被保険者(典型的には夫がサラリーマンの専業主婦)が離婚する際に認められている年金分割手続です。

合意分割と異なり、夫婦間で合意するまでもなく、当然に1/2の分割を請求することが出来ます。

但し、合意分割とは異なり、分割の対象期間が平成20年4月以降で分割請求者が第3号被保険者となっていた期間に限定されます。

 

(3)合意の方法

合意分割の場合は、夫婦間での合意が必要ですが、協議離婚、家庭裁判所での調停離婚、あるいは裁判離婚のいずれであっても離婚成立の際に取り決めをすることが可能です。

離婚時に年金分割の取り決めがなされなかった場合には、原則として離婚時から2年以内であれば当事者同士の協議で、あるいは家庭裁判所での調停、審判で取り決めをすることが出来ます。

 

(4)分割の対象

年金分割とは、支給される年金(現金)そのものが分割されるものではなく、保険料納付記録が分割される手続です。

例えば、夫から妻に年金分割がなされた場合には、妻自身が65歳になり、また妻自身の国民年金の滞納がない等、妻が年金受給者になった時から、分割された保険料納付記録から算定された金額の年金が支給されるここになります。

 

(5)その他

年金分割は実際には離婚調停や裁判の中で決められる事が多いこと、手続の理解も難しいことから詳細は弁護士に個別にご相談下さい。

 

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