交通事故でご家族を亡くされた方へ
1 死亡事故の場合の手続
交通事故によって被害者の方が亡くなってしまう場合もあります。
このような死亡事故は交通事故の中でも最も痛ましい事故であり、被害者の夫や妻、子ども、あるいは祖父母といったご家族の方にとっても計り知れない損害、苦痛が伴ってきます。
ただ、そのような苦痛の中でも、現実問題としては、被害者のご家族の方は交通事故の民事問題について保険会社と交渉をすることになり、その中で納得のできない主張をされることによって更なるストレスをこともあります。
そのような場合に、弁護士はご家族の方に代わって専門的知識をもって保険会社との交渉を行い、適切な内容での解決を目指すことにより、ご家族の方の助けになることが可能です。
2 死亡事故の場合の法律構成
交通事故案件の場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることが出来ます(民法709条)。
死亡事故の場合であっても、まずは被害者本人が加害者に対する損害賠償請求権を取得し、その損害賠償請求権を相続人の方が相続により承継するということになります。
また、亡くなられた被害者の近親者の方自身の損害賠償請求権も規定されています(民法711条)。
3 死亡事故の場合に賠償請求できる損害
(1)葬儀費用等
葬儀費用等は社会通念上、相当と認められる範囲で請求することが出来ます。
社会通念上相当と認めれる金額は実務上は類型化されており、自賠責保険の支払基準では基本的に60万円とされていますが、「立証資料等により60万円を超えることが明らかな場合は100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費とする」とされています。
これに対して、弁護士基準(赤い本)では、原則として150万円とされていますが、事案によりそれ以上の金額が認めれることもあります。
逆に、実際の支出額が150万円を下回る場合には実際の支出額とされます。
(2)慰謝料
① 慰謝料を請求できる者
交通事故で亡くなられた被害者の相続人は、被害者本人の慰謝料請求権を相続により承継するという形で慰謝料請求をすることが出来ます。
また、本人の相続人としての形でなくても、「被害者の父母、配偶者及び子」はそれぞれ各人固有の慰謝料請求が可能です(民法711条)。
また、「被害者の父母、配偶者及び子」に該当しない例えば内縁配偶者等も民法711条の類推適用によって固有の慰謝料請求が出来るとされる場合もあります。
② 慰謝料の金額(自賠責保険基準)
自賠責保険の支払基準では、亡くなられた被害者本人の慰謝料は350万円とされています。
また、遺族として慰謝料請求が出来るのは被害者の父母(養父母を含む)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児を含む)とされています。
そして、遺族の慰謝料の金額は、請求権者が1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円とされています(被害者に被扶養者がいる場合には200万円加算されます)。
③ 弁護士基準(赤い本)
弁護士基準では、亡くなられた被害者が家族の大黒柱の場合には2800万円、母親・配偶者である場合は2400万円、その他の場合(独身の男女、子供、幼児等)は2000万円~2200万円とされています。
自賠責保険の支払基準よりもずっと高額であることが分かると思いますが、この点が弁護士に依頼して頂くメリットになります。
なお、この金額はあくまでも目安であって例えば家族の大黒柱が亡くなったら2800万円の定額というものではなく、事案の内容等によって金額はある程度変動します。
また、この目安金額は当該死亡事故事案で認められる死亡慰謝料の総額であり、慰謝料の請求権者が多くなってもそのことで金額が増加するものではありません。
(3)逸失利益
① 逸失利益とは
死亡事故で亡くなられた被害者は、もし交通事故に遭わずに生きていれば、仕事をすることによって収入を得ていたはずです。
しかし、死亡事故で亡くなられてしまったために、生きていれば得られるはずであった将来の所得を失うことになってしまいます。
この生きていれば得られるはずであった将来の所得のことは逸失利益と言われ、損害賠償請求の対象となります。
なお、死亡事故以外の後遺障害事案においても、後遺障害が残ったことによって減ってしまった将来の所得分を逸失利益を請求することが出来ますが、死亡事故の場合には将来の所得が完全になくなってしまうという特徴があります。
② 逸失利益の計算方法
ⅰ 逸失利益は得られるはずであった将来の所得ですので、まずは被害者の基礎収入と、事故に遭わずに生きていれば事故日から何年間就労していたかという就労可能期間も定める必要があります。
一般的には就労可能期間は67歳まで就労可能なものとして算出します
ここまででも、被害者が専業主婦だったらどうすのか基礎収入額はいくらなのか、失業者だったら、学生だったら、高齢者だったらという疑問も出てくると思いますが、詳細は個別に弁護士にご相談下さい。
ⅱ 逸失利益の計算方法は、被害者が生きている後遺障害の事案であれば、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数となります。
ただ、死亡事故の場合には、被害者が生きていれば支出することになった生活費の支払いを免れるという事情がありますので、被害者本人の死亡後の生活費を控除して計算することになります。
そして、この生活費の控除率も実務上は類型化されています。
以上を計算式にすると、死亡事故の場合の逸失利益は、基礎収入×(ⅰ-生活費控除率)×就労可能期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数ろなります。
ⅲ このような逸失利益の計算は、初めて見る方には難しい面もあると思いますので、詳細は弁護士にご相談下さい。
4 弁護士に相談するメリット
交通事故案件は早期に弁護士にご依頼して頂くことにより、専門的知識に基づき、保険会社基準ではなく、弁護士基準に基づく適切な賠償金額を定めることが可能ですし、交渉のストレスからも解放されます。
また、特に死亡事故案件では、損害賠償請求についても相続の問題が生じて関係が複雑になりがちですので、弁護士による適切な問題整理が特に必要であると言えます。
ご家族の方が直接交渉することはストレスにもなりがちである上に、場合によってはかえって問題を複雑化させてしまう可能性もありますので、早期に一度弁護士に相談されることをお勧めします。
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