交通事故で後遺症を負った方へ

1 後遺障害とは

交通事故で傷害を負った場合、病院等に入院あるいは通院をして治療をすることになりますが、一定期間以上の治療をしてもこれ以上よくならないという場合があります。

これを症状固定というのですが、症状が固定して後遺症(後遺障害)が残った場合には、後遺障害に基づく慰謝料や逸失利益等の損害賠償請求が可能となります。

後遺障害とは、「傷害が治ったときに身体に存する障害」(自賠法施行令2条1項)のことであり、一般的には後遺症と言いますが、法律上の用語としては後遺障害となります。

そして、後遺障害が残ったとして損害賠償請求をするには、原則として後遺障害の等級認定を受ける必要があります。

 

2 後遺障害等級とは

後遺障害等級とは、自賠法施行令第2条の別表として定められている第1級から第14級までの各後遺障害の等級のことであり、赤本や青本にも記載されています。

自賠法施行令第2条の別表とは自賠責保険の後遺障害に基づく損害賠償として支払われる限度額を定めたものです。

例えば、別表の第1級には両眼失明等の6つの後遺障害が規定されていますが、この第1級の後遺障害が認定された場合の自賠責保険の支払限度額(逸失利益と慰謝料金額を合計したもの)は3000万円とされています(弁護士基準では慰謝料金額のみで2800万円が目安です。)。

また、後遺障害の中で最も軽度な第14級の後遺障害が認定された場合の自賠責保険の支払限度額は75万円とされています(弁護士基準では慰謝料金額のみで110万円が目安です。)。

なお、交通事故でしばしば見られるむち打ち症は、「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害第14級とされていますが、むち打ち症の中でも重度なものは「局部に頑固な神経症状を残すもの」として後遺障害第12級とされています。

後遺障害第12級の場合の自賠責保険の支払限度額は224万円です(弁護士基準では慰謝料金額のみで290万円が目安です。)。

 

3 交通事故被害にあった場合の保険金請求方法

(1)自賠責保険と任意保険の関係

自賠責保険は強制加入保険である性質上、賠償額の上限が低かったり、賠償される損害の範囲が狭かったりするため(物損は賠償されない等)、自賠責保険のみでは被害者の損害が十分に補償されない可能性があります。

そのような自賠責保険の不十分な部分を補うのが任意保険という関係にあり、任意保険は自賠責保険の上積みであると言えます。

ただ、被害者はまず先に自賠責保険に請求しなければならないというものではなく、請求手続について理解が必要です。

 

(2)自賠責保険に対する請求

① 被害者請求

被害者が加害者の加入している自賠責保険に対して、直接に賠償請求をするものであり、自賠責保険の大きな特徴であり、自賠法16条に規定されているために16条請求とも呼ばれます。

なお、自賠責保険は賠償額の上限額の低さ等で被害者保護に不十分な面はあるのですが、被害者側の過失が大きい場合の過失相殺等の面で自賠責保険が有利な場合もあります。

 

② 加害者請求

加害者が被害者に対して賠償金を支払い(示談が成立した場合等)、その加害者は自身の自賠責保険に対して保険金の支払いを請求するものであり、自賠法15条に規定されているために15条請求とも呼ばれます。

 

(3)任意保険に対する請求(一括払い)

現在、任意保険には示談代行がついていることがほとんどであり、被害者が交通時にあった場合、示談交渉の相手となるのはほとんどの場合は加害者本人ではなく、加害者の加入している任意保険の担当者となります。

そして、被害者の治療費等について任意保険会社が本来は自賠責保険から支払われるべき分まで一括して支払い、その後に任意保険会社から自賠責保険に請求するということが行われます。

これは自賠法に規定されている手続ではなく、任意保険会社が一括して支払いをするために一括払いと呼ばれています。

一括払いは被害者にとっては便利な制度ですが、いつまでも利用できるとは限らず、例えば治療費については、事故発生後一定期間が経過すると、任意保険会社の方から既に症状固定のはずであるから一括払いには応じられない等と打ち切りを言われることもあります。

 

4 後遺障害の認定手続

(1)事前認定手続(任意保険会社)

被害者との示談交渉を任意保険の担当者が行い一括払いが行われてきた事案において(交通事故のほとんどの事案がこうなっていると思います。)、後遺障害の認定手続もそのまま任意保険会社に行ってもらうことを事前認定手続と言います。

なぜ事前認定というかというと、任意保険会社が後遺症を含む示談交渉をする事前に、自賠責保険からどの程度の支払いがなされることになるのか、後遺障害についてどのような認定をするか確認するという流れになるからです。

この事前認定の場合、任意保険会社が損害保険料率算出機構に対して後遺障害の認定に必要とされる資料を提出して認定手続を進め、認定結果が出たらそれを被害者に報告し、示談交渉を継続することになります。

被害者にとっての事前認定のメリットは、申請書類の作成や、医療機関から画像その他の資料を取り寄せ、損害保険料率算出機構に提出するという手続を代行してくれるため、被害者の負担が軽くなるとう点にあります。

他方、事前認定にデメリットは、手続を行うのが加害者側の任意保険会社であるため、本当に被害者の後遺障害認定のために有利な申請、資料確保をしてもらえるか不明である点にあります。

 

(2)被害者請求

それまで任意保険会社の担当者と交渉して一括払いを受けていた被害者も、後遺障害の認定手続については被害者自身で自賠責保険に対して申請することが可能です(被害者請求)。

被害者請求による後遺障害認定手続の申請を行うと、自賠責保険を通して損害保険料率算出機構に資料が送られ、認定手続が行われることになります。

被害者請求のメリットは、自ら行う手続であるために自己の後遺障害認定に必要な書類がそろっているか等を確認しながら手続が進められる点と、後遺障害の認定がなされた場合には、基本的にはそのまま等級に応じた自賠責保険の賠償金が支払われることになります(事前認定に場合は賠償金の支払いがなされるのは示談成立後です。)。

被害者請求のデメリットは、自ら必要資料を集めて申請手続を行うことの煩雑さですが、弁護士に依頼して頂ければ申請手続は弁護士が行いますので煩雑さというデメリットが大きく軽減されます。

 

5 弁護士に依頼するメリット

弁護士にご依頼頂いた場合、専門的知識に基づいて、適切な後遺障害の認定を受けることが可能であり、その上で各後遺障害に基づく賠償請求額も弁護士基準に基づく適切な金額で行うことが可能です。

 

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