親権と面会交流
1 離婚の際の親権指定
(1)夫婦に子供が生まれた場合は、通常はその子供はその夫婦(父母)と一緒に生活をしていくことになります。
法律上も、婚姻中の未成年者は父母の共同親権に服するとされています(民法818条1項)。
親権とは財産上の管理権と身上監護権のことですので、簡単に言えば、未成年者の財産管理と身上監護は父母が共同して行うということです。
(2)しかし、父母が離婚をすることになって別居開始となり、未成年者は父母のいずれか一方とのみ同居をすることになる場合があります。
法律上、離婚の際には父母の一方を親権者と定めることになっています(民法819条1項・2項)。
要は、離婚前は夫婦共同親権だが、離婚をすると単独親権になるので、父母のいずれか一方は親権を失うということです。
(3)なお、通常、離婚の際に親権者に指定された者が監護権も有することになるので、離婚後は親権者と未成年者は同居することになります。
2 面会交流権(面接交渉)
面会交流とは、離婚(あるいはその前提の別居)に際して未成年者と別居することになった父又は母が、未成年者と面会をすることです。
仮に父母が諸事情により離婚することになっても、子供にとってはいずれも血のつながった大切な親子関係にあることは変わらないのであり、交流を継続することが子供の福祉に資するという考えに基づいています。
法律上、離婚に際しては面会交流について定めるべきものとされており(民法766条1項・2項)、その場合にはこの利益を最も優先して考慮するとされています。
3 親権者指定の判断基準
(1)離婚に際して父母のいずれを親権者・監護権者と指定するかについては、話し合いで争いなく決まる場合もありますが調停、裁判を通して争うこともあります。
離婚はどうしても感情面の対立もありますので、親権の争いも激しくなりがちであり、子供の奪い合いになることもあります。
ただ、この場合も重視すべきは何が未成年者の利益になるかということです。
(2)親権者指定の判断基準としては母性優先の原則が強調されることがあります。
確かに、特に乳幼児期における母と子供の繋がりは特別なものがあると思われますし、実務上も母性優先の原則は重視されていると感じます。
しかし、あくまでも最も重視されるのは子供にとっての利益です。
例えば、母性優先といってもそれによって未成年者にとっての従前の慣れ親しんだ環境が大きく変わってしまうような場合には、環境の継続性の方が未成年者の利益になる場合もあります。
親権の判断は複雑ですので、個別に弁護士に相談をして頂くことがよいと思います。
4 面会交流の頻度・方法
面会交流の頻度としては月1回程度とすることが比較的多いですが、宿泊を伴う面会交流を定めることもありますし、未成年者の利益の見地から色々な場合がありますので、詳しくは個別に弁護士にご相談ください。
面会交流の方法としては、当事者同士の連絡で決めていくこともあれば、弁護士が仲介する場合、あるいは第三者機関を利用する場合もありますので、この点もやはり個別に弁護士にご相談下さい。
5 面会交流の拒否
実務上、未成年者と同居している父又は母から、面会交流を拒否されることもあります。
基本的には子供の利益のためには面会交流は実施すべきとは言えますが、親子関係により拒否が正当と言えるような色々な事情もありますので、まずはご相談ください。
なお、不当な面会交流拒否に対して間接強制という金銭面からの強制手段もありますが、間接強制が認められるためには面会交流についてどのような定めがなされているかが重要ですので(イメージとしては面会交流の方法についてかなり詳細に定めている必要があります)、この点も個別にご相談下さい。